「目的地まで”距離は長いけど美しい道”か、”距離は短いけど普通の道”か。さてあなたはどっちを選ぶ?」。分岐する道の途中、この質問を投げかけられた。目的地に早く到着する事だけが答えじゃないからと美しい道を選んだわたし。そして大半の巡礼者もその道を選ぶ。
Burgosの街並みは遠く向こう。小さく見えるのか見えないのか、どうだろう。よく目を凝らしてみれば住宅や建物が密集している場所がある。そんなところまで人間は歩いて行けるのだな、人間の足は強靭である。
ひまわりはすっかり枯れてしまい、うなだれている。巡礼途中に出会った日本人の女の子たちはこの光景をみて「死者の行列のようだ」と語っていた。たしかにすっかりと顔を背け、それでも存在は強く主張しているさまは、言葉にせずともなにかしらを訴えている。夏はもう終わったよ、季節は変わったんだと。
丘の下り坂でチャンスと会ったので、少しだけ一緒に歩いた。昨晩誘われて参加した夜ご飯の会で彼女は、相当に飲みすぎて朝まで別のアルベルゲで寝ていたらしい。That’s ridiculous!…本当?誰かに怒られなかったの?ううん、大丈夫。これがカミーノなのね、そう語りながら彼女は自分自身を肯定している。アメリカからやってきた可愛い少女のあどけなさに、わたしもどこか励まされた。
Bordeaux出身のマダム・ブリジットと初めて会話した。仕事をリタイアして時間があるから、ひとりで歩きに来たの。サンティアゴに到着したあとはどうするの?と尋ねられ、ポルトガルに行くよ、と言うと彼女は目をキラキラと輝かせながらポルトガルは本当に素敵なところよ、うっとりした表情をした。
以前から多くのフランス人が絶賛していたポルトガルという国。ますます行かなくてはと、期待が高まる。わたしの目的地への到着日はなにもかもが不確定で、フランスに戻る飛行機の便すら予約していない。毎日のことを、その日ごとに決めていたい。でも、ポルトガルには行けるといいなと、夢想する。
美しい道の正体は、Burgosの街まで続く大きな公園を通るルートで、5〜6kmある川沿いに続く緑に囲まれた直線ルートだった。確かに美しいが、歩いても歩いてもどこまでもまっすぐ、そして同じ景色。今現在、どこを歩いているかわからなくなる。すれ違った巡礼者の女の子二人組もうんざりしている様子。「I’m going to be crazy…」。
キリのいいタイミングなどなく、ベンチを見つけた時点で休憩。そうしたら散歩をしている現地の人、フランス生まれBurgos育ちのおじさんが声をかけてきて自身の巡礼の話を教えてくれた。自転車巡礼、荷物は15kgで1日90kmペースだったという。信じられない。
そしてビズ(頬にキス)したがり自転車おじさんに出会う。英語も話せないしスペイン語でなんとか話をしようとしてくれるのだけど、まったく通じない。でも、ものすごく積極的。この熱意はいったいどこからやってくるのだろう。
大きな街に入るときは「すでに街に入った!」と思ってからが長いのだと痛感する。今日はたった24km程度なのに体はとっても疲れた。へとへとになりながらホテルに到着。大都市はホテルでもいいでしょうと選んだ場所は1泊40ユーロくらいの場所で、普段泊まる場所の4倍、でも一般的には安いほう。それはそれは、快適だった。あたたかいシャワーを浴び、自由な時間に洗濯ができて、なによりも個室なのだ。
巡礼をすると良いことは、幸せのハードルがすっかり下がることなんだな。
バルで3杯くらいビール飲んでピンチョス食べて、大聖堂内を鑑賞して街歩き。ふわふわした気持ちでぶらぶら散策するのが楽しい。そして治安もどことなく良いし、道も広くて開放感がある。都市でのんびり落ち着けるのは久しぶりだ。
▪️02/09/2017, AgésからBurgosまで, 25.1km, 37,538歩▪️