帰阪時に新幹線の中で、パオロ・コニェッティ著「帰れない山」を読み終わった。 11月末開催の「ヨーロッパ文芸フェスティバル」の一つの企画として、取り上げられたこの本。当日は著者本人の朗読を交えたトーク形式で行われたのだが、わたしはその日までに本の存在を知らなかったし、そもそも作品が面白いのか、はたまた著書が何者なのかもまったく理解していない中で「ただイタリア文学だから気になる」という関心のもとに会場へ向かった。 想像以上に会場は広く、多くのお客さんで埋め尽くされ、ほぼ満席状態。 読めばきっと納得するだろう。この作品がイタリア文学界の最高峰であるストレーガ賞を受賞した理由。冒頭から勢いを落とさず物…続きを読む
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ブログ名はイタリアの詩人 ウンベルト・サバの「四季」から
-からからに乾いた喉に流れる冷たい水のように言葉が全身に染み渡る。頭はくっきりとさえわたって、発する声も潤いを取り戻し、全ての記憶が輝きはじめる-。イタリア文学研究者であり作家の須賀敦子さんの文章を最初に読んだときに、わたしはそんな実感を持った。彼女の文章と言葉が自分の身体、全身にいきわたって、それはあまりにも純粋で美しかったため、「こんな文学体験は初めて」だと震えがとまらなかったのを覚えている。 彼女の言葉はきらきらと輝いている。わたしの目には単なる文字にみえなくて。 彼女の見てきたどんな瞬間も景色も、わたしの頭のなかに取り込みたくて。 文章だけなく彼女自身の、しなやかでたくましい女性として…続きを読む