現状と同じ人生を選ぶのか、否か。【カミーノ 巡礼記20日目】

Camino Espagne Europe

6kmと、8kmとお店も街も何もない道だからか、だんだんと感覚が麻痺して今自分がどこを歩いているのかさっぱりわからない。意識を繋ぐのは地面を踏みしめる足の裏の、確かな感覚。もう20日目で445kmも歩いた。残り339km、徐々に目的地までの距離感を掴みはじめている。 歩き始めた当初は、その距離を計算することで頭がいっぱいだったのに、いつしか数字は気にならなくなった。ただ目の前の、今日の1日をいかに楽しむか。上りも下りも、平らな道も、どんなふうにして味わうかしか考えていない。もしかすると、それが最後まで歩き切る秘訣なのかもしれないし、そういう感覚を持ってからこそ本当の巡礼が始まるのかもしれない。…続きを読む

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秋、通り過ぎゆく季節を追いかける【カミーノ 巡礼記19日目】

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2日前ほどに風の強い日があった。びゅうびゅうと吹きすさぶその風は北スペインに季節の移り変わりをもたらしたようで、歩いているとかすかに柔らかな秋の匂いを感じる。空は優しく澄んで、この秋の姿は日本でも感じたことががあると懐かしさに胸が高鳴る。季節のなかで秋が1番好きだ。特に落ち葉が舞い上がるほどの風のある秋がいい。 空の向こうをよく見れば、遠くの雲はくっきりとした夏の面影ではなく、秋の表情をこちらに向けている。どこか寂しさがあるだろうか、季節に置いていかれるような、はたまた通り過ぎる世界の後ろ姿を追いかけるような。通りかかった街の公園で、日本にいる友人に連絡をしてみる。「いま、424kmも歩いたん…続きを読む

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二週間ぶりの偶然の再会【カミーノ 巡礼記18日目】

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Villalcazar de Sirgaの街を出て、早朝にも関わらずまわりの空気が霞んでいたら、すぐさま視界はもやで包まれた。まっすぐの道が続くのは、ここがメセタという台地だから。気候条件がこれまで歩いてきた地域と異なるのだろう、樹木が密集しているわけではないけれど、もやで視界は限定的だ。 わたしはどこへ向かっているのか。たどり着かない場所に向かって歩いているのではないか。目的地は当然見えないし、霧に向かって歩いているということだけしかわからない。数メートル手前になってようやく、看板が現れる。次の街に近付いているという、目に見える確かな証拠である。 数十メートル先は何も見えない。最初の街である…続きを読む

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シルガの佇まいと平和に想いを馳せて【カミーノ 巡礼記17日目】

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朝ごはんは出発地点から6km先にあるFromistaにて、たっぷりのカフェコンレチェとパンオショコラ。このあたたかいカフェが、寝ぼけていた頭をしゃきっと目覚めさせる。スペインのパンはフランスのパンと、決定的に異なっている。良くも悪くも大雑把なのだ。形や味、だけれどもいまのこの巡礼地では繊細さなど必要なくて、素朴さこそが当然嬉しい。 久しぶりに単独行動をする若いフランス人男性を見かけた。フランス人はたいてい年配者で二人組か集団で行動する姿をよく見かけていたので、すこし珍しい。楽しそうにその場にいる人たちと会話する姿をみると、一人でいることが自由度がきいて好きなんだろうなと思う。自分自身も同様で。…続きを読む

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