時間軸と、街々と、健康な自分の身体【カミーノ 巡礼記14日目】

Camino Espagne Europe

ホテルでゆっくりと時間を過ごして9時半頃、近くのパン屋さんで朝食。せっかくだからのんびりと街の朝を楽しみたい、だけれども出発が遅れると日中の暑い日差しのなかで歩かざるをえないから出るなら早いほうがいい、と葛藤しつつ、テラスに珈琲を持っていく。緑がとても鮮やかで気持ちがいい、今日も快晴だ。

するとそこには、水色の派手な上着を着たオーストラリア人のピーターがいた。彼に出会うのは二日ぶり。巡礼当初に痛めた足の調子が悪く、スローペースで進んでいるという。とはいってもわたしも無理をしないスケジュールで歩いている。彼とはもう会えないかなと思っていたので、この偶然の再会は本当に嬉しかった。あと数分わたしの朝食の時間が違っていたら、出会えなかったのだ。彼はBurgosに2泊して病院に行くそう。Santiagoでまた会いたい。そしたら二人して、しっかりと喜びを分かち合えるだろう。

雲ひとつない青空、しっかり土地に根をはる大聖堂、そして凛としてくたびれている巡礼者のモニュメント。

巡礼の格好をしていると街中でも「Buen Camino!」とたくさんの人に声をかけてもらえる。そして巡礼の格好をした人は無条件に、同志だと思える。なんだか今自分のいる場所、歩いている世界が現世とは少し離れた空間にいるようだ。ただひとつの目的に向かって、ひたすらに歩くことだけを意識している場所。そういう線的な時間のなかにぽいっと自分の体ごと放り込まれたような感覚になる。

目的地Tardajosの少し手前でランチ休憩。ビールグラスに日差しが降り注いで黄金色に輝く。最高のご褒美だ。

10時過ぎに出発して13時過ぎにアルベルゲに着くという短い距離だけれども、少しでも前進しているので十分である。洗濯して、街歩きしてシエスタ。シャッターは閉じ、商店も見つからない。誰とも住人と会わないし、いったいここはなんなんだろう。住民すべてがどこかに一斉避難しているようで、置いていきぼりにされたよう。しんと静まり返った灰色の建物に、徐々にかぶさってくる曇り空の灰色のコントラストがわたしの目には奇妙に映る。いくらシエスタをしているからといっても、これでは死んだ街ではないか。

お店はなかったのでアルベルゲに併設するレストランでニュースを見ながら、タパスとともにワインを飲んでいる。少しだけ日本にいる友人と電話で話をする。電車の通っていないこの小さな片田舎で、ぽつんと世界から切り離されたような夜。テレビの画面に映る映像は異世界の出来事だ。さてわたしは誰と、何と、どこと繋がっているのだろうか。明白に存在するのは目の前にひろがる時間軸と、西に向かって散りばめられた目的地という名の街々と、健康で体力のある自分の身体。それだけを頼りに、明日からまた通常のペースを再開して次の大都市Léonを目指す。

▪️03/09/2017, BurgosからTardajosまで, 15.4km, 24,826歩▪️