朝ごはんは出発地点から6km先にあるFromistaにて、たっぷりのカフェコンレチェとパンオショコラ。このあたたかいカフェが、寝ぼけていた頭をしゃきっと目覚めさせる。スペインのパンはフランスのパンと、決定的に異なっている。良くも悪くも大雑把なのだ。形や味、だけれどもいまのこの巡礼地では繊細さなど必要なくて、素朴さこそが当然嬉しい。
久しぶりに単独行動をする若いフランス人男性を見かけた。フランス人はたいてい年配者で二人組か集団で行動する姿をよく見かけていたので、すこし珍しい。楽しそうにその場にいる人たちと会話する姿をみると、一人でいることが自由度がきいて好きなんだろうなと思う。自分自身も同様で。
ぽつりぽつりとある、道を指し示す貝殻印の石碑。まっすぐの道を曲がった先に、出くわしたのは大量のその姿。なにもこんなに設置しなくても、と突っ込みつつも、これまで一生懸命探して見つけていたものがこんなにも堂々と居座るのはどこか面白い光景である。
そしてVillalcazar de Sirgaに到着。巡礼のモニュメントは教会に向かって座っている。うまく説明できないのだが、これまで泊まってきたどの街よりも気持ちがいい。緑があるわけでもなく、天候のおかげでもなく、洗練された城下町のような凛とした佇まいをこの街全体が内包している。
バルが併設してあるAlbergue Tasca Don Caminoに今日は宿泊。20ものベッドがある大きな部屋に、一番乗りだった。シャワーブースが清潔で、庭で洗濯物も干し放題。大きな街の一つ手前だから、ここで宿泊する人もそもそも少ないのか。そういう選択を軸に歩いてもいい。出会える人が、自分と似た考え方かもしれないから。
バルで巡礼メニューを注文。ひとりにも関わらずワインをポットで提供してもらった。しかも可愛い陶器である。大きなホワイトアスパラのサラダは白ワインビネガーでしっかりと味付けされていて、お肉のメインは鶏肉のトマト煮込みだった。塩加減が絶妙で、シンプルなのに愛情のこもった優しい味。
これまで歩いたのはNavarra州、La Rioja州、そして現在のCastilla y León州。3つの州で街の趣が違うのは勿論だけれど、教会にもその文化の違いが顕著に現れている。León州は教会の正面上部が絵で飾られている。Rioja州だとそれがすべて金の飾りで、荘厳。もっときらびやかで豪華絢爛としている。その高級感が気づけば見られなくなってしまった。景色でいえばRiojaではワインが有名な分、葡萄畑がそこらじゅうにあった。現在はそれも見ることができず。
人だけでなく、全ての景色や町並みは、一期一会なのだなと当たり前のことを、改めて思う。
文化の差異について考えをめぐらせれば、スペインの歴史をより深く知りたくなる。そして未来からみた過去である現在、歴史となりうるものを、しっかりと築き上げていくのが今を生きるわたしたちの責任である、とバトンを受け継いだ気になる。
平和を積み上げるのには時間が必要だ。壊すほうが簡単で、それはあっという間に、誰にだってできる。現在を生きる多くの人が平和を望んでいるはずなのに、どうして争いが起こるのだろう。拗らせた自尊心とか、見せかけの強さとか、無駄な意固地さなんていらない、もっと誰もが、社会が、世界が素直であればいいのに。正直で素直が一番いい。それができないまま複雑に絡み合った国家間の問題、日々の報道、世界情勢。この問題を解決する手立ては、一体なんなのだろう。
▪️06/09/2017, Boadilla del CaminoからVillalcazar de Sirgaまで, 23.9km, 34,161歩▪️