二週間ぶりの偶然の再会【カミーノ 巡礼記18日目】

Camino Espagne Europe

Villalcazar de Sirgaの街を出て、早朝にも関わらずまわりの空気が霞んでいたら、すぐさま視界はもやで包まれた。まっすぐの道が続くのは、ここがメセタという台地だから。気候条件がこれまで歩いてきた地域と異なるのだろう、樹木が密集しているわけではないけれど、もやで視界は限定的だ。

わたしはどこへ向かっているのか。たどり着かない場所に向かって歩いているのではないか。目的地は当然見えないし、霧に向かって歩いているということだけしかわからない。数メートル手前になってようやく、看板が現れる。次の街に近付いているという、目に見える確かな証拠である。

数十メートル先は何も見えない。最初の街であるCarrion de los Condesも霧のなかだったが、街を抜ける途中にある道路沿いのBar Españaで朝ごはんを食べた。店内にはLeon行きのバスの案内が壁に貼ってある。どうやらここでバスチケットが購入できるし、バス停もお店の手前にあるらしい。バスに乗って目的地に行けば、どんな気分がするのだろう。きっと物足りなさを感じるはずだ。だからいまのわたしにはまだ必要ない、そう確認して巡礼を再開。1時間ほどで視界は良好に変わったが、この午前は何かの門をくぐり抜けたような不思議な体験だった。もしはっきりと街の全体像を把握したならば、違う印象を抱いたかもしれない。見えていたことも知れたことも出会えたひとも、異なっただろう。

規則正しく植えられた木々。いつからか新たに、林を作ろうとした誰かの意思があったことを示している。工業として利用されるのかそれとも、緑と増やすために植樹したのか。

次第に太陽が霧のなかでも存在感を増し、ものの数十分でいつも通りの青空が顔を出した。

そして、あの太陽の笑顔が似合うオーストラリアのスカイに、巡礼を初めて2日目のZubiri以来、つまり2週間ぶりに再会した。まさかこんな野外の仮設バルで!感無量。嬉しくて胸がいっぱいとはこのことだ! 名前のとおり空のように広い器で懐の深い彼女。女性の強さを兼ね備え、かつ人生を謳歌する姿に憧れる。わたしにとって、巡礼最初の出会いを彩ってくれたひと。

LogronoやBurgosの都市でそれぞれ連泊し、たくさん飲み明かしたという。彼女は彼女自身で巡礼を楽しみ、わたしはわたしのペースで休憩をとろうとして、二つの歯車が偶然同じ時間に、合致した。出会いは不思議だ、こちらはもう二度と会えないと思っていたのだから。

Calzadilla de la Cuezaに到着。スカイとの再会が嬉しくて、いつも聞いている音楽もより一層楽しいものとなる。口ずさむと気分は上昇。スカイと心を通わせるほど話し合った関係ではないのに、昔ながらの知り合いじゃないのに、一瞬の再会に大きな喜びを感じてしまう。これまでのすべてを、話したくなる。こんな出来事があったんだよと、こんな出会いもあったんだよと。きっと彼女なら笑顔で、話を聞いてくれる。

今日は直線距離16,8kmの街もない、野外バルを除きお店も何もないメセタをひたすらに歩く日だった。それでもスカイに会い、興奮で時間は光の速さで過ぎた。彼女は今日わたしが滞在する街よりも先に進むようだけれど、きっとまたどこかで会えるだろう。そういうゆるい繋がりで、心が満たされているのだから十分である。

良い一日だった、とにかくその一言に尽きる。真面目にこつこつと自分の速度で歩いたからこそ、偶然の再会がこれほどにも喜びに満ち溢れている。つまり、「歩くことを諦めない」ただそれだけで十分すぎるほどの幸福を得られるということだ。

▪️07/09/2017, Villalcazar de SirgaからCalzadilla de la Cuezaまで, 22.8km, 38,290歩▪️