理想のトルティージャに巡り会う【カミーノ 巡礼記21日目】

Camino Espagne Europe

アルベルゲを一番遅く出発しても7:30。それでも外はまだ朝焼けの最中で完全な明るさはない。のんびりキッチンでお湯を沸かしてコーヒーを入れて、甘いカスタードパイを数分で食べたなら準備万端。朝甘いものを食べると気合が入るし、目が冷めるのだ。

13kmほど何もない道を直進。普段なら退屈するけど昨日知り合った日本人の女の子と一緒だから沢山お喋りして楽しくて、時間が過ぎるのを忘れる。同じ関西出身であることや部活動(偶然にも共通していた吹奏楽部)のこと、そこで担当していた楽器のことなど、驚くほどに話が盛り上がって嬉しかった。道の途中、ベンチやテーブルのある広場について少しだけ休憩。彼女がリュックから取り出したバゲットやハムを取り出すと、もはや日本人であることなど忘れてしまって同じ巡礼者であり、たまたま話があう仲間だという感覚でしかなかった。同じ国に生まれ育ったからなんていう共通点はただのとっかかりでしかなく、それから先もっと相手を知りたいと思うのは、その人次第。あるいは自分次第である。

今日最初の街、Reliegos。といっても、次は目的地の街なので経由する街はこのひとつだけ。Restaurante albergue gilで注文した朝ごはん兼お昼ご飯の、トルティージャはこれまで食べて来たどのお店よりも一番、美味しかった。ずっしりとお芋が積み重なった生地をまとめるための卵、それも濃厚でトマトソースにまとってある。真っ赤な色合いで強烈な印象をもたせながら、グッと濃厚なトマト味。これだけでワインを1本は開けられる。

この街で夜を過ごせたならばふたつでもみっつでもおかわりをしたかもしれない。でもまだ時間は午前で、途中で止まっている暇はなかった。道路沿い片側に並ぶ木々、右左見渡せばぽつんと住居。高速鉄道が走っていた線路だって見えていた。平面、ひたすらひらべったい道。

途中マダムブリジットに再会。私の知らない女性と共に歩く彼女は可愛らしい麦わらのような帽子をかぶっていて、少女のように可憐だった。そしてMansilla de las Mulasに到着。

シャワーと洗濯を済ませ、同行していた女の子と一緒に近所のバルで、軽い打ち上げ。レストランでチーズソースがかかったポテトやトマトのモツ煮込みを注文。ビールが美味しい、ワインが止まらないおつまみは万国共通である。

彼女はこの巡礼の出来事をノートにメモをしていると話をしてくれた。そこには空白を埋めるほどのびっしりと詰め込まれた文章や、出会った人のイラストなどが描かれていた。

外はお祭りの時期。賑やかな夜が待っている。住人、子供達のそわそわした期待が、時折聞こえる歓声から伝わってくる。

閉店間際にかけこんだスーパーでビールとハムとチーズを購入。アルベルゲのテラスで軽い夜ご飯とした。そこでは足を怪我した若い男性が別の誰かに治療してもらっていて、誰がどの立場なのかはわからないけれど持ちつ持たれつの関係が生まれるんだろうなと感慨深くなった。信頼できるかできないかなんてわからない。だけれども親切や好意を受け取って、回復に至ると信じる。

明日たどり着く最後の大都市Leónも楽しみである。大きな街に入る前は期待を駆り立てすぎて、距離が遠く感じる事実にうんざりするかもしれないけれど、やっぱり大都市に入る前の晩はわくわくする。

▪️10/09/2017, El Burgo RaneroからMansilla de las Mulasまで▪️