Burgos-León間はそれほど長く感じなかった。実際にこれまでの大都市PamplonaやBurgosといった大都市間の距離は長かったのかもしれないし、友人と一緒に歩いているから短く感じるのかもしれない。大都市に入る前の郊外の複雑さ、単調さもない。そもそも、一人で歩くときは考え事が存分にできていいし、二人で歩くと相手について話が聞けるのが楽しい。どちらもいいことは沢山ある。しいていえば「誰かと歩く」はその瞬間の偶然でしかなくて、明日に繰り越そうなんてことは不可能だ。だからこそ貴重でもある。
朝食はふかふかのトルティージャ、いつ作られたかわからない古いゲーム機。わたしが小学生くらいの頃にゲームセンターにあったようなデザインとデジタル感を醸し出している。
街の入り口ではSanto Domingoで出会った日本人男性(通称:免色さん)とも再会し、3人で一緒にランチをすることになった。そのレストランがまた美味しかった。免色さんの選ぶものは基本的にハズレがなくて、そりゃそうだとあらためて思う。彼はそんな運動とグルメを楽しむためにここに来ているのだ。イベリコ豚のソテー、かぼちゃの付け合わせ、Leónの赤ワイン、あたたかくてふっくらしたパン…。話の内容は友人の、就職活動や将来について。巡礼中は比較的質素な食事なので、目の前に繰り広げられる鮮やかなお皿の上の品々、ひとつひとつ丁寧に味わい尽くす、そして感動する。
ホテルで少し休んでから大聖堂へ。ステンドグラスが有名とのことだけど、嘘偽りなく凄かった。これ以上どこにも手を加えられない完璧な美しさ。ゴシック建築はフランスで見慣れていたはずのに、それとはまた異なった力強さとたくましさがある。スペインの太陽が力強さを後押ししているのか。
PamplonaやSanto Domingo de la Calzadaで訪れたカテドラルにも似ているが、より大規模である。帰りにバルに寄ってゆっくりと一休みして今日歩いた道のりを記録。その後スーパーで買い物をする。明後日から巡礼を始めるというカナダのジョン・ベティ夫妻に話しかけられワインコーナーで20分くらい立ち話をした。わたしが持っている【mont-bell】の斜めがけ鞄が、【montréal(モントリール)】に見えた」とか、「日本には、万博に行ったことがあるよ」とか「エクサンプロヴァンスに芸術留学してたの」とか夫婦揃って表情豊かに話すものだから楽しくてワインを買うどころではなくなってしまう。話し終える隙間も無いくらいに、マシンガントーク。嬉しかったのは、仏語を学んでからなぜか英語の発音が良くなったと思っていて、それを彼らに「いい発音ね!」と言われこと。とはいっても、きっと仏語訛りの英語なのだろうけれども。
「またサンティアゴで、あるいはCaminoの途中で会おうね。」と言って、さよならをした。
鉛筆のように、空につきあげるような大聖堂。免色さんは「大聖堂のステンドグラスは、時間帯によって光が差し込む様が変わるよ」と言っていた。確かにいまの帰り道は、大聖堂を訪れていたときと空の色が違う。青空が元気よくわたしを見下ろしている。
Leónは素敵な街だ。疲れもあってバル巡りが全然できなかったからまた訪れたいと、この場所にいながら再び訪れることを願っている。一度訪れただけなのに心の奥深くでつながりや縁が生まれるのだから旅は面白い。身体を動かして移動して街を知る。自分の目で見て舌で感じて判断する。そういえば大学時代の先生が口を酸っぱくして語っていた概念を思い出した。それは「現場主義」、新聞記者だった彼が徹底的に叩き込まれた考え方である。新聞記者でもないけれど、文章を書きたいと願う一員であるからには、わたしにだってずっと念頭においていたほうがよい言葉だろう。
▪️11/09/2017, Mansilla de las MulasからLeónまで▪️