夜中に降った雨の名残。歩き始めて、木々の枝に雫がたまっている。それを覗き込めば世界は逆さまに見える。今日も朝焼けは気持ちがよくて、この日差しが登り切る前の時間がもしかしたら一番好きかもしれない。町から降りたら、ひたすらワイン畑の平野を歩く。 お昼前には日差しが強く降り注いだ。中継地点のLogronoに到着。ここはPamplonaよりは小さいけれどこれまで通り抜けてきた都市よりも幾分大きい。大きいと困るのが巡礼の印探し。まったく緑しかない場所であれば帆立貝の黄色マークと青い看板がぱっと目につくのだけれど、都市部にはそれがなく違うデザインになっていることが多々あった。今回も同様で、地面に書かれてい…続きを読む
投稿者: suisyo-seijuc
「自立」の意味をさぐりはじめる【カミーノ巡礼記7日目】
歩き始めて1週間が経過。朝目が覚めてまわりを起こさないように布団を片付ける。服を着替え、靴を履く。ストレッチを軽くしたなら荷物を背負い歩き始める。そんなルーチンに身体も慣れてきて、街の景色、というか街はほぼない畑道を楽しみながら歩けるようになってきた。今日の朝日は優しい色で。時折振り返って歩いてきた道のりとそれを包み込む空の美しさに励まされ、スキップしたくなる気分。 今日の朝ごはんはトルティージャをパンに挟んだサンドイッチをバルで。店内にはPharrell Williamsの「HAPPY」が流れていた。これも気持ちを前向きにさせた理由のひとつかもしれない。 It might seem craz…続きを読む
noteをはじめました。
いろいろと思うところがあり、noteををはじめてみることにした。このサイトはドメインを取得してカスタマイズして運営しているのだが、Wordpressでの更新が少し手間がかかるようになってしまったのと、noteの書き心地はどんなもんだろうと試してみたかったのがはじめた理由。 登録して使ってみると、やはり、流行するだけあってなるほど驚くほどに書き心地がいい。文字サイズ、余白、シンプルな操作性、書きたいことがどんどんと溢れてくるようなUIになっていた。文字数を考えることなく書いていけばあっという間に1000字は超える。気持ちよく書けるプラットフォームだったので、当分は記事をnoteで更新しようと思う…続きを読む
誰しもが、胸の中に抱える『帰れない山』がある
帰阪時に新幹線の中で、パオロ・コニェッティ著「帰れない山」を読み終わった。 11月末開催の「ヨーロッパ文芸フェスティバル」の一つの企画として、取り上げられたこの本。当日は著者本人の朗読を交えたトーク形式で行われたのだが、わたしはその日までに本の存在を知らなかったし、そもそも作品が面白いのか、はたまた著書が何者なのかもまったく理解していない中で「ただイタリア文学だから気になる」という関心のもとに会場へ向かった。 想像以上に会場は広く、多くのお客さんで埋め尽くされ、ほぼ満席状態。 読めばきっと納得するだろう。この作品がイタリア文学界の最高峰であるストレーガ賞を受賞した理由。冒頭から勢いを落とさず物…続きを読む
最悪のコンディションに最高の美しさを【カミーノ巡礼記6日目】
初めての雨のcaminoは一番辛いタイミングで襲ってきた。 コンディション維持のために25km以上は歩かない方が良いと結論づけたにもかかわらず、ガイドマップをみると本日の目的地Los Arcosには合計26km。Los Arcos前の街は12km手前にしかなくて、そこで滞在するとすれば今日は14kmしか歩かないことになるじゃないか、計算すればどこか物足りない気分になり、意を決して26kmを目指して歩いたらその12kmの道のりが辛過ぎて泣きたくなるほどの辛さだった。雨は降るわ、巡礼路に何も無いわで、強烈な孤独感が押し寄せる。進むか戻るか、いや戻る選択肢はそもそもない。いつだって、この道においては…続きを読む
誰かと競い合うわけではないから【カミーノ巡礼記5日目】
フランス人の道を34日で達成する計画でいえば、今日はEstellaまで到達しておきたいところの巡礼5日目。 巡礼初日に会った韓国人のイェンとは毎日連絡をとりあっている。「今日はどうだった?」「体の調子は大丈夫?」。足が痛いよと嘆く彼女は、案外この巡礼を割り切っていて「すべての区間を自分の足で完走することが必ずしも成功とは限らないと思う。個人個人の巡礼は違うから…」とすでにバスに乗ったり、荷物預けのサービスを利用したりしている。 34日自力達成計画がどうしても頭に浮かぶ私は、プライドが高く、意地になっているのかなと思った。イェンの言うとおりで、自分自身が納得していればどういうペースで…続きを読む
赦しの峠を超えた先にある小さな街【カミーノ巡礼記4日目】
Pamplonaに2泊したおかげで、体力や気力はしっかりと回復済み。その分朝早く出発ができると夜明け前、朝6時に町を出る。暗いからか巡礼の矢印サインが分かりにくい。でも同じ時間に歩き始めた巡礼者たちがいる、彼らの後を追いかければ大丈夫だ。郊外にある工場や大学など大きな施設をすり抜けていくと徐々に太陽は顔を出して、全体の空色も明るく変わる。今日もきっと暑くなる、スマホで天気予報を見るとどうやら気温は35度を超えるらしい。 朝焼けはいつも美しい。何もない茶色い畑を黄金色に染める。 今日は770mの丘「Alto del Perdon」を越える。赦しの峠という有名な場所らしいけれど、そんなことはつゆ知…続きを読む
留まる決意が引き連れたフラメンコ【カミーノ巡礼記休息日】
もはや今日が何曜日か分からなくなった。そういえばほかの巡礼者からは「日曜日には気をつけてね」となんども聞かされていたのだった。よほど大きい街でなければスーパーや薬局は閉まるから買いたいものが買えなくなる。確かに今後小さい街が増えてくるから、薬局や巡礼用品で欲しいものがあれば今日中に購入しておいたほうがいい。まずは巡礼のガイドブックを手に入れたかった、Saint-JeanでもらったものはあくまでもA4白黒のコピー用紙だったから、地図の詳細や工程の情報が掲載された冊子があればいいなと。 本屋さん、アウトドア用品店を探し散策していると偶然、巡礼用品専門店を見つけた。店内にはTシャツや靴下から、ピンバ…続きを読む
一期一会の意味を知るパンプローナ【カミーノ巡礼記3日目】
夜中にざあざあと雨が降ったようだ、確かに夢の中だったかうろ覚えの意識下で雨音や雷が聞こえた気がする。小さな窓から必死にスペースを見つけて干した洗濯物はもちろん乾いていない。雨の予感をみせなかった昨晩の空を恨むでもなく、仕方ないからとリュックに靴下を吊るし、乾かしながら歩くことに。幸い、朝のスタートは霧がかかる程度だったので安心して1日のスタートを切る、時刻は7時半。 昨晩のアルベルゲでは6人部屋で、その部屋を占めたのはほぼドイツ人だった。母と息子の2人と20代の女の子たち3人。就寝前には賑やかにおしゃべりを始めて、話に終わりが見えない。「眠れないから静かにして、ここはあなたたちの部屋じゃない」…続きを読む
野うさぎと亀と子猫が登場する物語【カミーノ巡礼記2日目】
清々しい朝がこの小さな村にも訪れた。パンにバターをたっぷりつけて、コーヒーの簡単な朝食を取りを出発する。国道添いの看板には「Santiago de Compostelaまで790km」。本当にこの距離を歩けるのだろうか?いまだに疑問に思いながらも、まず今日の目的地到着時間は14時頃を目指そう、と意気込む。歩き始める前にはしっかりと足を伸ばして、ストレッチをする。体はそれほどまでに疲れていない。筋肉痛もないし、ふくらはぎやマメなどの痛みもない。よし、今日も大丈夫。 道の途中、すれ違ったオーストラリア出身のコーリンは、Saint Jean Pied de Portに向かう電車の中でも出会っていた。…続きを読む